紙とエクセルでは、なぜ設備保全がうまくいかないのか?

近年、スマートフォンやタブレット等のモバイル端末が現場に浸透してきました。モバイル端末をうまく活用することで設備保全を大きく改善することが可能です。この記事では、なぜモバイルであることが設備保全にとって重要なのかを解説します。

目次

これまでのツール:紙とエクセル

現在、設備保全を実行する際に主に用いられているツールは、紙とエクセルです。

トラブル記録や点検表といった帳票類を紙に印刷し、現場の状況を記録した上でエクセルに集計する、という形でメンテナンスを実行している現場は多いと思います。

紙やエクセルはどんな業務にも応用可能な汎用性を持つ一方で、必ずしも設備保全に適したツールとは言えません。それは何故でしょうか。


紙・エクセルの問題点

紙・エクセルは「デスクトップツール」です。すなわち、基本的には机の上で使用することを念頭に置いたツールであるため、現場で作業を実行する設備保全に向いていません。

具体的には、①入力しづらい、②画像を残しづらい、③集計しづらい、といった問題があります。

①入力しづらい

紙もエクセル(を入力するパソコン)も、現場で必要な情報を入力することが難しいツールです。

日々忙しくしているなかで、現場の状況をさっと記録できるかどうかは、どれだけきちんとデータを残せるかに大きく影響します。その点で、紙やエクセルは、立ち仕事が中心となる設備保全に必ずしも向いていません。

②画像を残しづらい

紙・エクセル中心の業務の場合、現場の状況を写真や動画で残すのが難しくなります。デジカメやスマホで写真を撮り、パソコンに取りこむ…といったこともできなくはないですが、多くの手間を要します。

百聞は一見に如かずで、文字で記録に残すよりも映像で現場の状況を残しておくことが重要な場面は多くあります。解像度の高い情報を残しておくという点においても、紙やエクセルは必ずしも設備保全にとって最適なツールとは言えません。

③過去履歴を探しづらい

紙・エクセルどちらも、瞬時に必要な履歴を探すのに向いていません。現場ではなく事務所に過去の履歴が記載された紙やエクセルが保管されていることがほとんどのため、過去の履歴を検索しようとしても、移動に時間がかかるだけではなく、目当ての情報を検索するのに大きな手間がかかります。よって、現場ではその手間がかかるため、過去履歴を検索せずに作業にとりかかってしまうことも多くあります。

④集計しづらい

紙もエクセルも、基本的には「自由記述型」のフォーマットのため、担当者によって同じ事象でも異なる書きぶりになることが多くあります。

トラブルが起こった設備を記録する際に「成形機」と設備の単位で書くのか、「レシーバー」と部位の単位で書くのか…この表記のブレが、後々の集計の手間や集計データの質の低下に繋がります。


モバイルの利点

モバイル端末と設備保全に最適化されたアプリケーションをうまく活用することで、上記の紙・エクセルの問題点を劇的に改善することが可能です。

①入力し易い

モバイル端末はその名の通り、どこへも持ち運び可能で、立ちながら簡単に必要な情報を入力することができます。この入力のし易さは、より多くの現場のデータを集めることに寄与し、最終的には正しい意思決定に繋がります。

②写真・動画を瞬時に残せる

スマートフォンでもタブレットでも、その場でさっと写真や動画を撮ることが可能です。現場でどのようなトラブルが起こったのか、それがどう改善されたのか、といったことを映像で分かりやすく残しておくことが可能です。

③過去履歴をその場で検索できる

モバイル端末なら、事務所に戻って紙を漁らなくても現場で瞬時に必要な情報を検索できます。この検索性の高さが、トラブル時に過去を振り返りながら、正しいメンテナンス活動を行うことに繋がります。

④集計が不要

モバイルアプリを活用する場合、自由記述型の入力欄を大きく減らすことができます。例えば、設備や停止時間の入力を選択肢型の入力欄に置き換えることで簡単に入力ができますし、担当者による書きぶりのぶれも生じません。

選択肢型の入力欄はその入力のし易さに加えて、自動集計を可能にします。紙やエクセルに書かれた内容を読み解きながら(必要に応じて入力者に確認しながら)集計していく必要はありません。


まとめ

このように、モバイルをフル活用することで現状の紙・アナログ中心の業務に潜む細かな”不”を解決することができ、設備保全を効率化することが可能となります。

帳票の作成作業やデータの集計作業は、ひとつひとつの業務に要する時間がそれほど多くないこともあり、その年間を通じた投下時間の多さに注目が向けられることは多くありません。

恐らく、工場全体で年間を通じて相当な時間を帳票の作成業務に使われているはずです。その時間の何割かを、現場をより直接的に改善する業務に振り向けることで着実にトラブルは減ってきます。

これからの人手不足の時代においては、モバイルを活用した設備保全業務は必須となってくるでしょう。

岡部 晋太郎 株式会社M2X 代表取締役CEO
東京大学卒業後、総務省にてIT政策の企画立案を担当。その後、外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループに入社し、製造業における中長期の戦略立案、DX等を担当。メンテナンスの重要性と可能性に惹かれ、2022年に株式会社M2Xを創業

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