レンチタイムとは?
レンチタイム(Wrench time)とは、読んで字の如く、実際にレンチ(工具)を持って現場で作業している時間を指します。この時間をしっかりと確保できていればいるほど、設備の修理・改善が進むため、結果として工場全体の生産性の向上に繋がります。
しかしながら、一般的に、このレンチタイムはメンテナンス担当者の1日の稼働時間の20-30%に留まっていることが多く、実際には十分な作業時間を捻出できていないと言われています。ベストプラクティスは55%と言われるこのレンチタイムの増加を阻む原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
レンチタイム確保を阻む障壁
レンチタイムを十分に確保できる理想的な状態をイメージしてみます。
それは、
👌 トラブルの内容を十分に理解し、
👌 作業に必要な工具と部品を手にし、
👌 即座に現場に駆け付け、
👌 作業に必要な知識・経験を有し、
ている状態だと言えます。
では、この理想像と現実の間にはどのようなギャップがあるでしょうか。
典型例としては、
🤦♂️ トラブル発生後、メンテナンス担当者がなかなかつかまらない
🤦♂️ 連絡があっても、どんなトラブルが起こっているか分からない
🤦♂️ とりあえず現場に駆けつけて状況を確認してから、必要な工具と部品を取りに行く
🤦♂️ しかしながら目当ての部品が見当たらない
🤦♂️ 作業に必要な手順書・マニュアルが見つからない、熟練の人と連絡が取れない
というような状態だと思います。
このように、現場のコミュニケーションミス、共有される情報の解像度の低さ、部品やマニュアルに関する情報が散逸している、といった諸要因が複合的に絡み合い、十分なレンチタイムを確保できない状況に繋がっていることが分かります。
レンチタイム確保のための解決策
上記の課題を克服するためには、以下の解決策を用意する必要があります。
- コミュニケーションの円滑化/非同期化:
- 常に現場の各メンバーが部署を超えてコミュニケーションを取り合える状況を作る必要があります。電話は極めて即時性の高いコミュニケーション手段ですが、それだけに頼っていると電話がつながらない限り作業が進みません。チャット等、非同期のコミュニケーション手段はこのような課題の解決に効力を発揮します
- 共有する情報の解像度の向上:
- 口頭や文字情報での連絡では、現場で何が起こっているかを十分に伝えるのが難しい場合があります。そのようなときに、写真や動画を添えて情報共有することで、トラブル内容の理解や、問題解決への確度の高い打ち手の考案に素早くたどりつくことができます
- マニュアルや部品等の情報の一元化
- トラブルを解決する過程では、必要な手順が「わからない」、必要な文書や部品が「みつからない」といったことが良く起こり、そのために無駄な移動や待ち時間が発生します。これらの問題を解決するため、現場で必要な情報を一元管理しておくことは重要です
これらの解決策はすべて、デジタルソリューションにより解決できます。
ただし、重要なのは、これらの各機能が別々のアプリケーションにより実現されるのではなく、一か所に集約されていることです。デジタル化はされているが、各機能ごとにアプリケーションが別々の場合、現場担当者の教育コストやアプリを使いこなす工数は高くなり、結果としてレンチタイムの大幅な向上は見込めません。
今後、人手不足は深刻化する一方、設備の老朽化等によりメンテナンスの作業は増えていきます。そのような中でも効率的に業務を行い、十分なレンチタイムを確保するためには、設備保全の業務をワンストップ/オールインワンで行えるデジタルソリューションが必要になってくるでしょう。
岡部 晋太郎 株式会社M2X 代表取締役CEO
東京大学卒業後、総務省にてIT政策の企画立案を担当。その後、外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループに入社し、製造業における中長期の戦略立案、DX等を担当。メンテナンスの重要性と可能性に惹かれ、2022年に株式会社M2Xを創業