一足飛びに予防保全に移行していませんか?

「事後保全から予防保全に移行しましょう!」業界全体で常に叫ばれていることです。しかしながら、意味ある形で予防保全を実現できている企業は多くありません。突発トラブルに追われるのではなく、先手先手の対応がしたくて予防保全へ移行したのに、現場は忙しくなり費用は嵩むばかり…それは何故か、実効的な予防保全を実現するためには何が必要なのかをこの記事では解説します。

目次

予防保全をやればやるほど現場が疲弊していく?

設備トラブルが起こってから対処する事後保全ではなく、事前にトラブルを防ぐ予防保全に移行すべき…設備トラブルを排除し工場の稼働率を最大化することを目的とする工場経営の考え方に照らせば、至極真っ当な考え方です。しかしながら、実際に予防保全を実施しようとすると、いくつもの疑問が湧いてきます。

  • どの設備、どの部位を点検する?
  • どの頻度で点検をする?
  • 点検をするとして、機器の状態をどう評価する?
  • ただでさえ人手不足なのに、だれが点検する?
  • そのスケジュール管理はどうする?計画が変わったら?

といった具合に、実際に予防保全をやり切ろうとすると、検討しなければいけないことは沢山あります。しかしながらこれらの各論点を一つずつ潰していくのは難しいので、多くの現場では熟練の技術者の堪や経験、もしくはメーカー推奨の部品交換期間を頼りに点検をしているのが現状です。

その結果何が起こるか。まず、端的に忙しくなります。ただでさえ日々突発的なトラブルや現場からの応援要請で忙しいのに、そこに様々な頻度で行われる点検活動が加わります。忙しくてその日予定していた点検がやりきれなかったら、その計画変更や担当の割り振りも必要です。

次に、コストが今まで以上にかかります。メーカー推奨の部品交換時期が到来したので点検をしてみたが、それほど摩耗してなさそう。けどトラブルが起こったら嫌なので部品を交換しておこう…といった具合に保守的に部品交換を行うので、どんどんと部品コストが嵩んでいきます。

突発的なトラブルを無くして先手先手の保全を実現したかったのに、いつまで経ってもゆとりが生まれない。なんなら突発的なトラブルの数は減らないのに点検活動をはじめた分だけ忙しくなり残業も増える…当初の目論見と異なり、予防保全への移行を試みたが現場は変わらず、結局事後保全中心に戻ってしまう現場は良くあります。


予防保全への移行がうまくいかない要因

予防保全がうまくいかない多くの原因は「現場で何が起こっているか分からないから」ということに起因していることがほとんどです。

事後保全ではなく予防保全で対処した方が良い機器はどれなのか…ではそれらの機器をどの頻度で点検すべきなのか…どのような状態に至ったら部品を交換すべきなのか…これらの意思決定をするためには、各現場で何が起こっているのかをきちんとデータとして収集・蓄積しておく必要があります。

どの機器がどれくらいの頻度でトラブルを起こしているのか。各部品が実際にどれくらいの期間で摩耗しているのか。これらの情報無くしては、効率的な予防保全の実現は難しくなり、結果としてメーカーの推奨期間に踊らされることになりかねません。
(そもそも、メーカー側も自社製品でトラブルを起こしたくないので、保守的に期間を設定しているはずですし、部品交換がメーカーの収益に繋がるのであれば猶更です)

裏を返すと、「予防保全に移行するためにはまずは事後保全を含む現場のデータを収集する」ことが必要だとも言えます。現場で何が起こっているかを把握できていないまま、一足飛びに予防保全に移行しても、自社に合った適切な点検や部品の交換頻度を見いだせず、挫折してしまうのです。


実効的な予防保全へ移行するために

とは言え、現場で生じているトラブルやその予兆を記録したり、丹念に部品の交換記録やその摩耗期間を記録していくのは大変です。特にこれまで主に用いられてきた紙・エクセル中心の現場では、これらの情報を記録・集計するのに多くのリソースを要してしまいます。

一般的に、現場で用いられる帳票の数が増えれば増えるほど記録の徹底度合いは下がっていきます。日々忙しくする中で、トラブルの記録はなんとかつけることが出来たが、部品の交換記録はできずに放置してしまった…ということは良く現場で起こっていると思います。

デジタルソリューションであれば様々な帳票の記録・集計工数を大きく下げることができます。複数のエクセルのシートやファイルを別々に管理するのではなく、現場での仕事の流れに応じて、シームレスにトラブルの記録や部品の交換記録を付けることができます。

予防保全への移行には、事後保全のデータが不可欠です。予防保全に一足飛びに移行し、また事後保全に戻ってくるようなことは起こさないよう、まずは現場で起こっていることをデジタルソリューションを活用し効率的に記録することをお勧めします。

岡部 晋太郎 株式会社M2X 代表取締役CEO
東京大学卒業後、総務省にてIT政策の企画立案を担当。その後、外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループに入社し、製造業における中長期の戦略立案、DX等を担当。メンテナンスの重要性と可能性に惹かれ、2022年に株式会社M2Xを創業

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