機能比較だけしていませんか?
設備保全システムの導入を検討されているお客様からは、良く機能面に関する質問を受けます。確かに、貴社の目指す設備保全の在りたい姿を実現するために必要な機能が有るか無いかは重要です。しかしながら、検討の際に視るべきポイントは、果たしてシステムが持つ機能だけでしょうか。
設備保全システムを開発・提供し、システムの導入前から導入後まで伴走させていただいている弊社の経験を踏まえ、後悔のないシステム選びの際に重要と考える3つのポイントを紹介します。
①導入数よりも解約率
各社のホームページにはシステムの導入数が良く掲載されています。しかしながら、この導入数としてカウントされている数字は、各社定義がバラバラです。
トライアルのみ行った企業を含めている場合や、一度契約したものの既に解約した企業を含めている場合、「導入社数」としておきながらも導入した工場の数もカウントしている場合(この「工場」というのも曖昧でカウントしにくい概念です)、場合よっては導入先のラインの数等も合わせてカウントされている場合があります。
どれだけたくさんのお客様に活用されているかは確かに重要な指標の一つですが、それ以上に重要なのは、お客様が満足して使い続けているかです。したがって、商談の際には、導入数よりもシステムの解約率(契約社数のうちの解約社数が占める割合)を尋ねてみると良いでしょう。そのシステムの顧客満足度が推し測れるはずです。
②導入前後のサポート内容
設備保全システムは設備や部品マスタの登録をはじめとして導入前に一定の準備が必要になるほか、導入後も着実な現場への浸透を推し進めていく必要があります。日々忙しい中でこれらをお客様単独でやり切るのは難しく、システムベンダー側がどのようなサポートを導入前後でしてくれるのかを確認することは、機能面の比較と同等かそれ以上に重要と考えます。どれほど素晴らしい機能を持ち合わせていても、現場で使われなければ意味がないからです。
導入前後にどのようなサポートをしてくれるのか、そのサポートは問い合わせ窓口を経由したものか、それとも専属の担当者が伴走してくれるのか、サポートの回数に制限が設けられているか等は詳しく各社に聞いてみると良いでしょう。
③自社開発をしているかどうか
機能比較だけを行いシステム導入をすることのもうひとつの問題点は、そこに示されている機能があくまで現時点のスナップショットである点です。近年主流となりつつあるクラウド型の設備保全システムの場合は、スピーディーにバージョンアップを行うことが可能であり、たとえ導入時には自社の求めるすべての機能を持ち合わせていなくとも、将来的にそれが実現される可能性は十分にあります。
この機能進化/改善のスピード感を推し測る上で確認しておくべき点は、システムを自社開発しているかどうかです。世の中で提供されている設備保全システムのなかには、必ずしも自社で開発しておらず、グループ内のシステム関連の子会社や第三者のシステムベンダーに開発を委託しているケースがあります。
システムの提供元の会社にエンジニアがいるかいないかはスピーディーな開発/改善を行っていく上で大きな差が出るポイントです。「第三者であっても委託先にたくさんのエンジニアがいるのであれば良いじゃないか」と思われるかもしれませんが、本当に良いプロダクト作りをするためには設備保全に知見を有し、顧客課題を十分に理解したエンジニアが必要です。この点も是非、システム検討の際に確認されてみてはいかがでしょうか。
後悔のないシステム選びをするために
いかがでしたでしょうか。設備保全システムは日々の設備保全を支える基盤となるシステムであり、自社に最適なものを慎重に選ぶ必要があります。そのためには、システムが持つ機能だけではなく、サポート体制も含めた多面的な視点で検討を行うことが重要です。
後悔のないシステム選びをするためには、①既存の顧客がどれだけ満足して使い続けているか(≒解約率)、②導入前後にどれだけ充実した支援をしてくれるか(≒サポート内容)、③機能の改善/進化をスピード感を持って行えるか(≒自社開発しているか)、の3点も比較検討の際の視点に加えながら、自社にマッチしたシステムを選択されることをお勧めします。
岡部 晋太郎 株式会社M2X 代表取締役CEO
東京大学卒業後、総務省にてIT政策の企画立案を担当。その後、外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループに入社し、製造業における中長期の戦略立案、DX等を担当。メンテナンスの重要性と可能性に惹かれ、2022年に株式会社M2Xを創業