「棚卸(たなおろし)」と聞いて、気が重くなる保全担当者は少なくないはずです。 生産の合間を縫って倉庫に入り、部品を一つひとつ数える作業は、どうしても生産性の少ない業務と捉えられがちです。
しかし、予備品管理は設備保全の「基礎体力」と言える重要な要素です。 M2Xが今回リリースした「予備品棚卸機能」に合わせて、なぜ今、正確な棚卸が求められるのか。単なる在庫確認の枠を超えた、その本質的な価値について整理します。
「ない」ことのリスク:MTTR(平均復旧時間)への直撃
なぜ、私たちは棚卸をするのでしょうか? 「経理上の資産管理」はもちろんですが、保全現場にとっての最大の目的は、「いざという時の即応体制」の確立です。
設備トラブルによるダウンタイムにおいて、最も回避すべき時間は何でしょうか。 それは、故障診断の時間でも、修理作業そのものの時間でもありません。 「あるはずの部品が見つからない」「在庫があると思っていたら欠品していた」ことによる、部品待ちの時間です。
帳簿在庫: 1個
実在庫: 0個(前回使用時に記帳漏れしていた、等)
このデータの「ズレ」は、MTTR(平均復旧時間)を悪化させます。 数百円のパッキンやリレーが無いだけで、生産ラインが長時間停止してしまう──。これは現場のミスというだけでなく、生産計画全体を揺るがすリスク管理の課題です。
定期的な棚卸によってデータの精度を保つことは、設備のダウンタイムリスクを最小化し、安定した操業を守るための「保険」と言えます。
「ある」ことのコスト:死蔵在庫とスペースの最適化
一方で、「欠品が怖いから」といって無闇に在庫を積み上げるのも、コスト管理の観点からは問題です。
倉庫の奥に、すでに廃棄された設備の専用部品が眠っていないでしょうか? 過剰な安全在庫設定により、数年分使いきれないほどの部品が山積みになっていないでしょうか?
経営的な視点で見れば、在庫は「資産」であると同時に「コスト」でもあります。 長期間動いていない在庫(死蔵在庫)は、保管スペースという貴重なリソースを圧迫し、本来活用できるはずの予算を固定化させている状態です。
正確な棚卸を行うことで初めて、「何が不要か」「何が過剰か」が見えてきます。 棚卸を通じてこれらを可視化し、スリム化することは、工場の資産を適正化する重要なプロセスなのです。
「点」から「線」へ:DX時代の棚卸アプローチ
これまでの棚卸が重荷だった最大の原因は、その手法のアナログさにあります。 紙のリストに出力し、現場で記入し、事務所に戻ってPCに入力する。このプロセスには時間がかかるだけでなく、転記ミスやタイムラグが発生しやすいという課題がありました。
これからの棚卸は、「年に1回の一大イベント(点)」から、「日常業務に組み込まれたサイクル(線)」へと進化させるのが理想です。
そこで不可欠なのが、デジタルの力です。 スマートフォンやタブレットを活用し、現場でバーコードを読み取り、その場で実数を確定させる。在庫の差異があれば、その場で修正する。
これにより、棚卸のハードルは下がります。日常的に在庫精度が維持されていれば、大規模な一斉棚卸の負担も軽減され、常に「正しいデータ」に基づいた発注や保全計画が可能になります。
M2Xの新機能「予備品棚卸」が目指すもの
私たちM2Xは、創業以来常に、「使いやすさ」と「データの繋がり」にこだわってきました。
今回リリースした棚卸機能は、単に数を数えるためのツールではありません。 日常の点検・修理履歴と予備品在庫を連動させ、「いつ、どの設備で、何が使われたか」を正確に追跡し、適正な在庫管理を実現するための基盤です。
「部品がない」ことによる停止リスクを減らし、「過剰在庫」による無駄をなくす。 現場の負担を最小限に抑えながら、確実な予備品管理を実現するために。M2Xの新機能を、貴社の保全業務の高度化にぜひお役立てください。
岡部 晋太郎 株式会社M2X 代表取締役CEO
東京大学卒業後、総務省にてIT政策の企画立案を担当。その後、外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループに入社し、製造業における中長期の戦略立案、DX等を担当。メンテナンスの重要性と可能性に惹かれ、2022年に株式会社M2Xを創業