2026.5.27

紙の依頼書が届くまで2〜3日。そこが、変えなければならない出発点だった。

課題
紙の修理依頼書が現場を回り、修理着手まで2〜3日
過去事例の確認に2〜3時間。半日仕事になっていた
部品在庫が担当者の頭の中。属人化で、担当者の不在時には対応が滞る
解決策
修理依頼書をM2Xに集約。承認・対応をリアルタイム化
過去事例・見積書・関連書類を設備台帳と紐づけ、検索性を向上
部品在庫をM2Xに集約。誰でも在処を確認できる
効果
故障発生を即把握し、修理対応の動き出しが前倒しに
簡単な修理の完結:2〜3日 → 1日
過去事例・書類の検索:2〜3時間 → 2〜3分以内に
部品の在処を保全外のメンバーも含めて共有し、属人化を解消
予防保全をカレンダー+通知で一元管理し、抜け漏れを防止
株式会社丸五様の工業用品部は、自動車のエンジンルーム内で使用される特殊なラッピングホースを、車種ごとにカスタマイズして生産されています。多品種少量生産・ジャストインタイムを支える生産現場では、5Sや改善活動を通じて日々「現場力」を磨くカルチャーが根付いています。
今回は、M2X導入を主導された工業用品部 生産技術グループ グループリーダーの杉田立哉様に、保全DX推進の経緯と現場の変化についてお話を伺いました。
ー まず、担当業務と保全業務への関わり方を教えてください。
杉田さん(以下、杉田):工業用品部の生産技術グループでグループリーダーをしています。チームは3名で、設備の点検・修理が中心です。社内向けの作業台などを内製することもあります。生産技術グループはもともと社内にはなかった部署で、新工場の立ち上げと設備移設のタイミングで、その指揮を執るために立ち上がったチームです。
ー 導入前、紙ベースで保全業務を運用していた頃の状況を教えてください。
杉田:保全はもう全部、紙でやっていました。修理依頼書も点検記録もすべて紙ベースで、しかもメーカー様との取り決めで20年は保管しないといけない。20年分を紙のままで取っておくので、いざ過去の事例を引っ張ろうとすると、まず棚を探すところから始まる。「あの修理、いつだったかな」「あの部品、いくらだったかな」と探すだけで2〜3時間かかることもありました。
ー 修理依頼が現場に届くまでの流れも、紙だと時間がかかりますか。
杉田:そうですね。現場で異常が発生してから、現場のリーダーが書式を作って印刷、グループのリーダーへ上がって、生産技術のリーダーへ届く。そこからハンコを押して、ようやく担当者が修理に取りかかる。書類自体が現場からこちらに届くまで2〜3日かかるのが当たり前でした。
急ぎなら電話で先に動きますが、急ぎでなければ何件かまとめて上げてきたり、先に修理を済ませてから後日依頼書だけ出してくるようなパターンもありました。承認の途中で止まったり、内容的に微妙なものが宙に浮いたりもしていて、何が終わって何が終わっていないのか、紙ベースでは正直、よく見えていなかったんです。

ー 過去の修理記録を活用する場面でも、紙だと負荷がかかりそうですね。
杉田:これも大きな話で、似たような故障が起きたときに「前はどう対応したか」「いくらかかったか」を引き出そうとすると、本当に半日仕事でした。出てこなければ、過去事例を探すのは諦めて、見積もりやカタログを一から取り直すしかない。せっかくの過去データを、活かしきれていなかったんです。
ー 紙以外で、特に課題が大きかったのはどこですか。
杉田:部品の在庫管理です。一応Excelで管理はしていたのですが、保全のメンバー以外、たとえば現場の人が設備を一時的に直したいといったときに「この部品、どこにあるんだっけ」「在庫いくつだっけ」が分からない。勝手に使われて在庫が合わなくなったり、いざ修理しようと思ったら欠品していたりということが起きていました。
部品がなければ、その設備への対応が後回しになります。他の設備に生産をシフトしてもらうか、最悪は残業で取り戻すしかない。納期に余裕があれば「あとでまとめて」と言えますが、当日中に納めないといけない数が残っていたら、もう間に合いません。
ー 監査時の書類対応も、紙だと大変なのではないですか。
杉田:これも紙だと毎回しんどかったです。監査などで「予防保全の報告書を見せてください」と言われるたびに、棚から探して出していく。M2X導入前は、書類の置き場所そのものを説明することに労力を使っていました。
ー M2X導入のきっかけは何でしたか。
杉田:最初は社内のExcelで頑張ろうか、という話も出ました。でも、どうせ手を入れるなら、タブレットや携帯で現場のままに使えるほうがいい。現場で起きたことをそのまま写真や動画に収められたほうが圧倒的に便利だと考えたんです。
別の業者さんに相談したこともあるのですが、提案の中身はExcelベースっぽくて、携帯で開けるイメージじゃなかった。「これでは運用が重くなる」と思って、いろんな展示会を回ってみる中で、M2Xさんと出会いました。
ー 比較検討の中で、何が決め手になりましたか。
杉田:展示会の現場で実際に画面を見たときに、「やりたいこと、ここに大体入っているな」というのが第一印象でした。修理依頼書も点検も、設備台帳も部品在庫も全部入っている。他社さんも何社か見ましたが、「いいところは部分的にいい、でも金額が合わない」「機能が足りない」というのが多くて、トータルのバランスでM2Xに絞られました。
あとは、画面を見ながら「今後こういうこともできるんじゃないか」と発想が広がっていったのも大きかったですね。
ー 導入後、まず変わったのはどこでしたか。
杉田:依頼書の流れが、根本から変わりました。修理依頼が作成されたタイミングで、こちらにそのまま飛んでくる。中身も画面で見えるので、「故障が起きた」「どこがどう壊れた」が即座に分かる。「じゃあ、この部品と工具を準備しておこう」と、依頼書を受け取る前から動けるんです。
以前は紙の依頼書がこちらに届くまで2〜3日かかっていました。届いてようやく中身が分かって、それから準備に動く。簡単な修理でも完結まで2〜3日かかるのが普通でした。今は故障発生のタイミングで内容が画面で見えているので、準備を前倒しできる。簡単な修理なら、依頼から完結まで1日で終わるようになりました。
ー 過去事例の参照や見積もりの取り回しはどうですか。
杉田:これは劇的に変わりました。前は2〜3時間かけて棚から探していた過去の依頼書や見積もりが、瞬時に引き出せる。検索性がまったく違います。
監査の場でも「これ見てください」と画面を一発で開けば終わりです。設備台帳に書類を紐づけておけば、どこにあるかを説明しに行く手間もないんです。
ー 「写真が添付できる」というのは、現場とのコミュニケーションを変えたと伺いました。
杉田:はい。紙の頃は「ここが壊れた」と書いてあっても、現場に行ってみたら全然違う場所だった、ということがよくあったんです。道具を持っていったのに、また帰って取り直す。それが2〜3日分の承認を経た後に起きるので、結構大変でした。
今は壊れた箇所を写真に丸をつけて撮ってくれるので、「ここなら、これとこれを持って行こう」と一発で準備ができる。動画もまだ100%使い切れてはいませんが、補足で使っていけば、現場往復はもっと減らせるはずです。

ー カレンダーやタスク管理機能も活用されているそうですね。
杉田:予防保全はM2Xのカレンダーで管理しています。前はOutlookのカレンダーで関係者にだけ予定を共有して、それとは別にエクセルでも保全カレンダーを管理する二重運用でした。M2Xは修理関係だけが見えるカレンダーになっているので、月間ビューで開くだけで「これやってなかったな」と一目で分かる。通知も飛んでくるので、抜け漏れがなくなりました。
ー ダッシュボードはどう活用されていますか。
杉田:メインは件数を見ています。修理依頼書・作業依頼書・予防保全と分けて、工程ごとに何件あるかを確認しています。工程ごとに件数が積み上がっている設備があれば、トラブルが多いところだなとか、同じような対応が繰り返されているなと気づける。そこから「ある程度部品を持っておこう」とか、「同じ対応が続くなら新しい改善のヒントになるな」というところに結びつけやすくなりました。
ー 部品在庫の管理も、現在は移行を進めているところですね。
杉田:今期、1月から、故障の多い設備・修理の多い設備に絞って在庫管理を始めています。設備ごとに必要なパーツを並べて、写真と金額も付けているので、どこに何があるか、いくらの部品なのかが画面でぱっと確認できるようになりました。
うちの生産技術チームは3名で、実際に修理を手がけているのは2人ほどなんですが、いまは『どこに何がいくつあるか』をチーム全員で確認できるようになりました。それだけでなく、修理メインではないメンバーや、新しく入ってきた人、現場のメンバーが見られるようになると、対応がまったく違ってきます。仮に2、3人が同時に出張などで抜けても、他の人に「あの部品はここにあるよ」と渡せる。属人化を減らすという意味でも、一歩前進だと思っています。
ー 今後どんな展開を考えていますか。
杉田:直近の最優先は、点検の電子化です。点検箇所は200近くあるので、リーダーがアプリ上でチェックを入れていく運用にしたい。現場で使うタブレットの整備など、実現に向けた段取りを社内で詰めているところです。
もう一つは、今年から技能実習生を受け入れるので、設備ごとに作業手順の動画を作って、QRコードを設備本体に貼り付けて、その場で動画を見られるようにしたい。日本語だけでなく、たとえばインドネシア語で動画を作って設備台帳に紐づけておけば、現場で困ったときにすぐ確認できる。M2X上に手順や知見を溜めていけば、技術伝承の基盤としても効いてくるはずです。
ー 部品発注業務にもM2Xを広げたいというお話でしたね。
杉田:そうですね。今は購買への発注書を一から手打ちしているのですが、M2X上の部品リストから発注を出せるようにすれば、誰でも、どこからでも発注できる。社外に出ているときも携帯で開いて指示が出せます。「これどこですか」と聞かれても、設備の品番から辿れば一発で答えられるので、間接部門のコミュニケーションコストもかなり減ると思います。
ー 同じように紙ベースで困っている保全担当の方に、メッセージをお願いします。
杉田:「紙に戻れるか」と聞かれたら、もう戻れません。検索ができる、繰り返し業務がアプリ上で回る、過去のデータと比べられる。一度この便利さを知ると、もう紙には戻れないです。
最初から完璧を狙う必要はないと思います。うちも、依頼書からスモールスタートしました。一番引っかかりの少ないところから始めると、現場の反発も出にくいし、現場が「逆に楽になった」と感じてくれれば、そこから先は早い。改善文化のある職場ほど、こういうツールはハマると思います。
杉田様のお話で印象的だったのは、「現場が逆に楽になった」と感じてもらうことを起点に、依頼書 → 在庫 → 点検 → 技術伝承へと、無理なく広げていく進め方でした。生産技術グループという、現場と経営をつなぐ立場だからこそ、紙の煩雑さの痛みも、データを意思決定に活かす展望も、両方を冷静に語っていただけたのだと思います。
点検の電子化や、技能実習生向けの動画マニュアル化など、丸五様の次のフェーズにも、引き続きパートナーとしてご一緒できればと思います。
(取材・文:M2X)