
日興薬品工業株式会社
属人化解消
抜け漏れ防止
事務工数削減
技術継承
課題
点検表は紙で多い月は50枚。記入が後回しになり、実施の有無がその場で見えない状態
記録が文字のみで後から読み解けず、「あの設備はあの人しか分からない」属人化
予備品の在庫や発注点が見えず、部品切れによる設備の停止
過去に導入したデジタルツールが定着せず、投資を活かしきれなかった経験
解決策
紙とM2Xの二重運用はせず、一気に切り替え
毎日触れる日常点検から着手し、最初の1か月で立ち上げ
週1のミーティング・全員参加の説明会・評価制度への組み込みによる、「会社としてやる」姿勢の明示
予備品に発注点を設定。点検記録は画像・動画つきで「機械のカルテ」として蓄積
効果
予備品の発注漏れがゼロに。3時間規模の停止が約20分で収まった例も
記録を探す時間が30分から2〜3分へ短縮
点検の実施状況を日時つきで可視化。画像・動画の履歴が技術伝承にも寄与
紙の全廃から約3か月で現場に定着
日興薬品工業株式会社は、健康・美容飲料の受託製造(OEM)と、自社ブランド商品の企画・製造を手がける食品メーカーです。飲料を製造・充填する工場では、稼働を止めないことがそのまま事業を支えており、設備の保全は日々の生産と切り離せません。
同社では設備保全を専門に担う部署を置かず、製造オペレーターが保全を兼務する体制をとっています。その現場を、製造部門と生産管理の二部門を兼任する立場からまとめているのが、製造部 製造課 兼 生産管理課 課長の川嶋 知啓様です。
今回は、紙の点検表を全廃し、わずか3か月でM2Xを現場に定着させた川嶋様に、導入前の課題、踏み切った背景、そして現場に根づかせるまでの進め方についてお話を伺いました。
— まず、川嶋様のご担当業務から教えてください。
川嶋 知啓様(以下、川嶋さん):私が担当しているのは、いわゆる工場の中の人や設備を管理する製造部門と、生産計画やそれに合わせた調達を行う生産管理部門です。いまはこの二つの部門を兼任しています。設備も、ユーティリティ関連の付帯設備から製品を作るために必要な製造設備まで、すべて私のところで管理しているという形ですね。
— 保全は専門のチームで担当されているのでしょうか。
川嶋さん:いえ、弊社には設備の保全だけをメインにした部門がありません。製造部門のオペレーターが設備の保全を兼務するという形になっていて、オペレーターは合計で20人ほどいます。日常点検も、定期メンテナンスも、突発的なメンテナンスも、それぞれ担当しているチームで回しています。
— チームとして、どんなことを大事にされていますか。
川嶋さん:稼働率、どれだけ工場を止めないか、というところだと思います。そのために必要なメンテナンスや日常点検は徹底していく。それでも機械はどうしても故障する時があるので、その時の部品交換などで、工場の停止を少しでも短くする。これは毎年目標に掲げています。KPIも稼働率ですね。
— 導入前は、点検や設備保全の記録まわりでどんな課題がありましたか。
川嶋さん:月に一度のメンテナンスや、突発的な予備品交換や修理は記録するルールにはなっていたのですが、どうしても記録が後回し、おろそかになりがちで、残したり残さなかったりでした。また、設備の点検は紙で1日1回点検し、1か月分が1枚になっていました。こちらもまたまとめて書くことができてしまうような形で、リアルタイムに状況を把握することができていませんでした。
— 人によっての差も出ていたのでしょうか。
川嶋さん:ありました。記録が残っていたとしても文字だけの記録が多かったので、後から見返しても何のことか分からないことが多くて。結局、いろんな設備で「あの人に聞かないと分からない」という状態になっていました。仕事が人についてしまっていた、いわゆる属人化ですね。
また、定期的に手入れが必要な箇所でも、そのことを知らないメンバーもいました。しかも、手入れがされていないこと自体に周りも気づきにくい。結果として設備が壊れ、高額な出費につながってしまったこともありました。
— 設備が長時間止まってしまうような問題も起きていたのですか。
川嶋さん:予備品の在庫を把握しきれていなくて、いざ交換しようとしたら部品がない、ということが度々ありました。月に1〜2回くらいは、予備品切れで対応が滞ることもあったと思います。部品がなければ、その分ラインが止まってしまう。ある時は遠方にまで緊急で購入しに行き、その間、半日ほど止まってしまったこともありました。
— 止まると、その分のしわ寄せも大きいですよね。
川嶋さん:当社は飲料を製造しているので、いったん中身を仕込むと、それをすべて充填し終えるまではその日を終えられません。翌日に持ち越せないので、止まった分は後ろに伸びて、残業でカバーするしかありませんでした。
— 管理する側としても、紙の確認は大変だったのでは。
川嶋さん:そうですね。設備ごとに毎月紙が出てくるので、多い時は合わせて50枚程にもなります。それを一枚ずつ確認して押印していくのは、かなりの負担でした。
— 積年の課題に対し、なぜM2Xが解決策になると思われたのですか。
川嶋さん:点検表が紙のままでは、やっているのか・やっていないのかがリアルタイムで分からない。部品の在庫切れで、設備が止まって稼働率が落ちる。課題があること自体は、以前から分かっていました。ただ、それをどう解決すればいいのかが見えていなかった。そんな中で展示会でM2Xを見て「これなら解決できる」と大いに期待しました。
— 展示会では、どんな点に可能性を感じましたか。
川嶋さん:大きかったのは、設備の状態をリアルタイムに、現場と管理側の全員で共有できることです。それまでは現場で起きたこと・対応したことが私にまで届かず、後から知るようなこともありました。全員が即時に情報共有できれば「ここが壊れたなら、念のためこちらも確認した方がいい」といったやり取りもその場でできると感じました。
もうひとつは、文字だけでなく画像や動画をデータ容量無制限で残せること。後から別の人が見ても状況がありありと分かります。それまでも何度も設備カルテのようなものを作ろうとしたのですが、保管の難しさ、更新の工数、探し出す手間などを考えると、紙では限界がありました。M2Xなら、それが実現できると思いました。
— 社内では、どのように合意を得ていったのですか。
川嶋さん:経営層も現場も、設備の稼働率はとても重視していました。その稼働率を下げている原因のひとつが「保全に関する情報の属人化」にある、というのは、みんな感じていたことです。そのため、「属人化を解消して、止まらない現場をつくる」という方向性は、すぐにまとまりました。もともと会社全体でペーパーレスを進めようという話もあり、その後押しもありました。
— 導入を決めてから、立ち上げはかなり早かったと伺いました。
川嶋さん:やると決まってからは早かったと思います。実は以前、作業手順を動画で残すDXツールを一度入れたことがありました。ですが、まったく定着しなくて。最初は盛り上がるのですが、時間が経つにつれてだんだん続かなくなって、会社としてはお金だけ無駄にして終わってしまった。その経験があったので、今回は「それだけは繰り返さない」と強く決めていました。
— どんな順番で進めたのですか。
川嶋さん:まずは毎日触る日常点検から始めました。チェックリストさえ作ってしまえば、あとはログインして表を開いてポチポチ押すだけなので。これは最初の1か月くらいで立ち上がりました。毎日触るところから始めたのが良かったと思います。
迷ったのは、元の紙も数か月は残してその間は両方利用して様子を見るべきか?でした。でも、それはやらずに一気に切り替えました。二重運用を続けていたら、おそらくうまくいかなかったと思います。現場からすれば手間ですから。
— 現場への浸透は、どう進めましたか。
川嶋さん:週1回、M2Xだけについてのミーティングをしました。各チームのリーダーと集まって使用状況をヒアリングして。やっていないところがあると「自分たちだけやっていない」となるので、みんなそこは意識してくれました。デジタルに抵抗のある人もいますが、そこは近くにいる若手にサポートしてもらって。「やって当たり前」の雰囲気にして、やらないことのほうが不自然になるようにしていました。
現場だけでなく、事務のメンバーに手伝ってもらえたのも大きかったです。紙でやっていたものをM2Xに落とし込む作業の多くをテキパキと一気に進めてくれました。操作そのものが分かりやすく、M2Xのサポートもあったので、そんなに難しくなく立ち上げられました。
— 導入時の説明会には、立ち見が出るほど沢山の方がいらっしゃったそうですね。
川嶋さん:はい。関係者はほぼ全員参加で、自由参加にはせず、あえて強制的に集まってもらいました。会社として取り組むんだ、という姿勢を示したかったので。評価の仕組みにもデジタル化への取り組みを組み入れました。会社として本気でやる、と示せたことは、定着のうえでかなり大きかったと思います。

— いま、特に活用されている機能はどれですか。
川嶋さん:予備品の在庫管理はすごく助かっています。点検や交換をするのは製造課の現場ですが、実際に発注するのは事務のスタッフです。以前は電話や口頭で「この予備品を頼んでおいて」と伝えていたので「言った・言わない」で揉めることもありました。いまはM2X上で、発注されているか、いつ届くかを現場からも確認できるので、安心して任せられます。
— 過剰在庫や発注漏れも減ったのでしょうか。
川嶋さん:M2X導入に際して、各部品の発注点を決めて登録したのが大きいです。以前は誰が発注するかも決まっていなくて、二人が同時に頼んでしまったり、消費のペースが遅いのに早いタイミングで頼んでしまったりで、結果、過剰在庫も起きていました。いまは在庫が発注点まで来たら注文する、という流れができているので、発注漏れはもちろん、過剰在庫に悩むこともなくなりました。金額も入れているので、現場の担当者に「高い予備品なら大事に使おう」という意識も少し芽生えているように思います。
— その発注点は、いまはどのように決めているのですか。
川嶋さん:いまは、現場の担当者や私で決めています。データを見ながら最適な発注点を割り出す、というところまではまだできていません。ただ、M2Xを導入したときも、直近のことよりも「5年後に役に立つように」と思ってやっていたところがあって。使い続けてデータが溜まってくれば、もっと適切な発注のタイミングも見えてくるはずだと思っています。今でも十分に役立っていますが、この先もっと役に立つものになる、という確信があります。
— 稼働率への効果は、実感がありますか。
川嶋さん:全体の数字で言うのは難しいのですが、事例としては、電子系の部品が一つ壊れた時に、その予備品を在庫として持っていたので20分ほどの停止で済んだことがありました。おそらく在庫がなければ3時間ほど止まっていたものです。以前は在庫が無くそれくらい止まってしまうこともあったので。
— 記録を探す手間はいかがですか。
川嶋さん:紙だと30分探している、なんていうこともざらでした。いまは検索したら2〜3分ですね。スマホやPCで簡単に探せるので、大変助かっています。
— チャット機能もよく使われていると伺いました。
川嶋さん:チャットはかなり使っています。社内の連絡、生産スケジュールの共有、あとは課題ごとにチームを組んだらチームごとにチャットルームを作ったりもしています。会って話すのは日常的にはなかなか難しいので、部門をまたいだコミュニケーションも、以前よりずっと取りやすくなりました。
— 他のメッセージアプリではなく、M2Xのチャットを使う理由は。
川嶋さん:一番は、業務のやり取りをM2Xに集約できることですね。「業務の連絡はM2Xで」というのはかなり言い続けました。記録も生産計画もチャットも同じ場所に集まっているので、あとから探すのも楽です。
スマホ、パソコンなど各自が持っている端末に限らず使えるため、事務所メンバーがパソコンで生産計画を作成、PDFやExcelでチャットで共有すれば現場のメンバーは通知を受け取り、スマホで見られます。生産計画は頻繁に変わるものなので、その共有は非常にスムーズになりました。
— 点検業務も変わりましたか。
川嶋さん:日常点検は、以前は紙のシートに1月分を記入していき、まとめてサインする、という形でした。極端に言えば、1月分をまとめて記入したとしてもわからなかった。今はM2Xに日々入力していくので、当日に実施状況をリアルタイムで確認、承認するのが当たり前になりました。
現場としては、文字で伝えられないことを画像や動画で残せるのも大きいです。慣れていない担当者が部品を交換する時に、「ここがこうなったら、ここを変えればいい」というのが、その機械のメンテナンス履歴の写真を見れば分かる。技術の伝承にもつながっていると思います。
— 新しい工場を建てる計画もあると伺いました。今後、M2Xの活用も含めて、どのような展望をお持ちですか。
川嶋さん:これから目指したいのは、デジタルの力で設備トラブルを減らし、稼働率を上げていくことです。製造業なので、稼働率が事業に直結しますから。M2Xにデータが蓄積されていけば、故障の予兆や、最適なメンテナンスのタイミングも見えてくるはずです。いま新しい工場を建てる計画も進んでいますが、そちらでも、この仕組みを使っていきたいと思っています。
あとは、M2Xの設備台帳に作業手順等のマニュアルを蓄積していくことも更に進めたいです。それにより、現場が必要な時にすぐに確認できる状態を作ることができる。これも、「あの人しか分からない」状態から抜け出すための取り組みのひとつです。少しずつ進めています。
— 最後に、同じように課題を抱える保全担当の方へメッセージをお願いします。
川嶋さん:皆さん課題には気づいていると思うのですが、実際に進めてみると、管理者として想像以上に楽になりますし、改善につながります。現場とのコミュニケーションも増え、知識の共有が進んでいると感じます。やってみる価値は十分あると思います。
過去に一度、システムの定着に失敗されたという川嶋様。その経験を「二度と繰り返さない」という覚悟に変え、二重運用に逃げず一気に切り替え、週一のミーティングや全員参加の説明会、評価制度への組み込みを通じて「会社として取り組む」という姿勢を明確に示し、「やって当たり前」の空気をつくりながら、わずか3か月で現場に根づかせられた進め方には、多くの示唆がありました。「毎日触るところから始める」というシンプルな判断が、定着の分かれ目になっていたことも印象的です。新工場での展開や作業手順の紐付けなど、これからの広がりにも、私たちM2Xは伴走してまいります。貴重なお話をありがとうございました。
(取材・文:M2X)