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2工場の予備品在庫を一元化。欠品による長時間停止の未然防止を実現 

2工場の予備品在庫を一元化。欠品による長時間停止の未然防止を実現 

2026.10.28

三和罐詰株式会社

事業内容

缶飲料・スパウト付パウチ飲料・加工食品の生産・販売

創立

1957年5月

従業員数

261名

  • 属人化解消

  • 稼働率・ロス改善

  • ダウンタイム削減

  • リアルタイム可視化

  • 部署横断連携

  • 履歴参照

  • 課題

    紙帳票と表計算ソフトに保全記録が分散、履歴1件の探索に30分〜1日を要することも

    ライン単位で予備品を別々に管理していたことによる、同じ予備品の重複購入と在庫切れの併発

    担当者の記憶頼みの予備品の在庫管理によって、重要部品の在庫確認に最長で丸1日

    予備品の有無が分からないまま探し続けることによる、長時間のライン停止と製品ロスの発生

  • 解決策

    現場でスマートフォンから写真付きで入力する、検索できるトラブル記録・点検記録

    2工場の予備品在庫の一元化による、どこに何がいくつあるかの可視化

    予備品ごとの保管場所と現物写真の登録による、記憶に頼らない在庫管理

  • 効果

    本社工場スパウトパウチラインにおける長時間停止の減少

    いつ誰が何を実施したかの可視化による、原因が分からないまま設備が止まる状況の解消

    予備品の欠品に起因する長時間停止の、年数回から年1回程度への減少

    三和罐詰株式会社は、山形県で缶飲料(一般缶・ボトル缶)やスパウトパウチ飲料、パウチ・カップ・缶詰などの加工食品を生産する受託製造メーカーです。1957年の設立以来、大手ブランドの飲料・食品を受託生産しており、生産拠点は本社工場(山形県中山町)と天童工場(山形県天童市)の2つです。

    今回は、本社工場 工場長の山科和紀様(以下、山科さん)、天童工場 工場長の松渕宏之様(以下、松渕さん)、本社工場 製造2課 課長代理の棚橋様(以下、棚橋さん)、天童工場 製造2課 リーダーの加藤様(以下、加藤さん)、天童工場 製造2課 サブリーダーの鈴木様(以下、鈴木さん)に、紙と表計算ソフトによる管理から、保全記録・点検・予備品管理をデジタルへ移行した経緯と、現場の変化についてお話を伺いました。

    探すのに丸1日。止まっている時間がそのままコストになっていた

    — 工場では、どのような指標を目標にされていますか。

    松渕さん: 品質と安全を最優先としたうえで、工場では「稼働率」「歩留まり」「ロス率」の3つを重要な指標として管理しています。
    保全活動はこれらすべての指標に関わっていますが、特に影響が大きいのが設備の停止時間です。設備が停止すると、生産計画の遅れや残業の発生につながるだけでなく、工程によっては製品ロスが発生する場合もあります。
    特に飲料や食品の製造ラインでは、停止時間が長引くほど生産性やコストへの影響が大きくなります。そのため、トラブル発生時にいかに早く復旧できるか、また設備停止そのものを未然に防げるかが、保全における重要なテーマだと考えています。

    — M2Xを導入される前、トラブルの記録や点検、予備品の管理はどのように運用されていましたか。

    山科さん: トラブル履歴や点検記録、予備品管理は、紙の帳票やパソコンの表計算ソフトを使って運用していました。本社工場と天童工場で管理方法が統一されておらず、ラインごとに記録の残し方も異なっていました。整備記録は手書きで管理しており、1枚の用紙に複数の整備内容や部品情報が記載されています。
    過去の整備履歴や故障履歴を確認する際は、まず記録の保管場所を探し、その後に目的の情報を探し出す必要がありました。そのため、1件調べるだけでも30分以上かかることは珍しくなく、場合によっては見つけ出せないこともありました。

    — 予備品の在庫状況を調べるのには、どれくらいの時間がかかっていましたか。

    松渕さん: 長いときは丸1日かかることもありました。
    予備品はラインごとに管理しており、それぞれのラインで個別に購入・保管していました。そのため、社内に同じ部品があっても把握できず重複購入してしまったり、逆に必要な部品が別のラインに保管されていても、その存在や保管場所が分からなかったりすることがありました。
    そのため、部品が必要になると「どこかにあったはずだ」と関係者に確認しながら探すことになり、見つけるまでに多くの時間を要していました。
    最終的に部品が見つからず、生産を断念したこともあります。部品の手配が必要になり、納品されるまで設備を再稼働できず、製品や包材、原料のロスにつながることもありました。

    — 点検についてはいかがでしたか。

    松渕さん: 紙で運用していると、どうしても記録の抜けや管理漏れが発生しやすくなります。
    オーバーホールや定期点検については、年次や半年ごとの実施計画は管理していましたが、「どの設備のどの箇所に対して、どのような作業を実施したのか」といった詳細な履歴までは十分に残せていませんでした。
    実際には設備全体を一度に整備するのではなく、複数年に分けて計画的に進めることも多いため、過去の実施範囲が分かりづらくなることがありました。その結果、点検や整備の対象から漏れてしまう箇所が発生するリスクもありました。

    やれていなかったから止まっていた。記録を資産として残すという判断

    — 紙と表計算ソフトでの管理から切り替えようと考えられたきっかけは、何だったのでしょうか。

    山科さん: 日々の故障対応や生産対応を優先していると、どうしても目の前の業務に追われ、現状維持になりがちです。しかし設備の経過年数が長くなるほど、過去の故障履歴や整備履歴は、次の対策や更新計画を検討するための重要な情報になります。
    以前は、故障を修理しても記録が残る場合と残らない場合がありました。担当者がその場で対応して復旧した場合は、「誰が、いつ、どのように対応したか」が記録に残らず、担当者の経験や記憶に依存してしまうことも少なくありませんでした。

    また、技術伝承という面でも課題を感じていました。経験豊富な担当者が持つ知識やノウハウを、次の世代へ確実に引き継いでいくためには、情報を個人の中に留めるのではなく、誰でも活用できる形で蓄積していく必要があります。
    そこで、これまでの記録を単に残すだけではなく、将来の保全活動や技術伝承に活用できる「資産」として管理したいという思いが強くなり、記録の残し方や管理方法を見直すことにしました。

    — 社内で設備保全業務のDXの話が進んできたのは、どういう状況からだったのでしょうか。

    松渕さん: 今回のM2X導入に限らず、当社では全社的にDXを推進しています。会計や販売管理、原料管理、日常的に使用している帳票類についても、順次デジタル化を進めています。
    設備保全は、設備や予備品の情報を登録して終わりではありません。いつ、どの設備に、どのような点検や整備を行い、どの部品を交換したのかという履歴を継続的に残していくことが重要です。
    そうした情報が蓄積されることで、点検や部品交換の実施状況を把握しやすくなり、計画的な保全活動につながります。設備保全を属人的な管理から仕組みで管理する形へ変えていきたいという思いもありました。

    予備品を探す時間がなくなった。誰がいつ整備したかも分かる

    — M2Xの導入後、現場で目に見えて変わったのはどのような点でしょうか。

    鈴木さん: 以前は予備品の保管場所が統一されておらず、必要な部品を探すのに時間がかかることがありました。
    M2X導入後は、在庫情報と保管場所を確認できるようになったため、必要な部品をすぐに見つけられるようになりました。また、予備品を集約して管理するようになったことで整理整頓も進み、人に聞かなくても誰でも必要な情報を確認できるようになっています。

    — 記録が残るようになって、変わったことはありますか。

    鈴木さん: 以前は、設備に不具合が発生しても、その直前にどのような作業が行われていたのか分からないことがありました。実際に、あとから確認すると休日に誰かが整備を行っていたことが判明するケースもありましたが、記録が残っていないため、原因を特定するまでに時間がかかっていました。
    M2Xでは、いつ、誰が、どの設備に対してどのような作業を行ったのかを記録できます。そのため、設備に異常が発生した際も直前の作業履歴を確認でき、原因の特定がしやすくなりました。
    また、以前は記録そのものが残らないこともありましたが、現在は現場でそのまま入力でき、写真も合わせて登録できるため、作業履歴を残しやすくなっています。

    — 予備品がなくて止まる、ということ自体は減りましたか。

    松渕さん: 以前に比べると減っていると感じています。まだ完全になくなったわけではありませんが、予備品の在庫状況や保管場所を把握しやすくなったことで、必要な部品を探す時間や欠品に気付くまでの時間は短縮できています。

    棚橋さん: 昨年のお盆に、本社工場でエンコーダーが急遽必要になったことがありました。夏季休暇中だったこともあり、当初は部品が見つからず、このままでは休暇明けの生産に影響が出る可能性がありました。
    その際、M2Xで在庫を確認したところ、天童工場に在庫があることが分かりました。すぐに担当者へ連絡して部品を手配し、お盆期間中に交換対応を完了することができました。
    もし在庫情報を把握できていなければ、部品調達まで設備を動かせなかった可能性もあり、在庫を一元管理することの重要性を実感した出来事でした。

    先行導入ラインでは長時間停止が減少。稼働率の改善にも寄与

    — 数字の面で、何か変化は表れていますか。

    棚橋さん: 直接的な効果ではないものの、先行してM2Xを導入した本社工場のスパウトパウチラインでは、以前に比べて明確に停止が減っていると感じています。今の取り組みを続けていくことで他のラインでも停止を減らしていければと思います。

    山科さん: 実際に、本社工場のスパウトパウチラインの稼働率は導入以前を上回る水準で推移しています。もちろん、M2X単体の効果ではなく、現場の活動の積み重ねによるものと認識しています。ただ、部品がないことで長時間止まる、という停止は確実に減りました。
    一方で、技術の伝承はまだこれからです。同じトラブルが起きたときに、熟練の人を呼んで対応、ということは未だにあります。それぞれの対応内容をしっかりと記録に残していくことで、次は別のメンバーが対応できるようになる、そういったことの実現を目指していきたいと思います。

    — ロス率については、いかがでしょうか。

    棚橋さん: 本社工場のスパウトパウチラインでは、製品によっては設備が停止すると、復旧するまで調合液を廃棄し続けなければならず、停止時間が長くなるほどロスが大きくなります。
    そのため、長時間の停止が見込まれる場合は、早い段階で廃液を止める運転へ切り替える判断が重要です。判断が遅れるほど、調合液の廃棄量が増えてしまうためです。
    しかし以前は、必要な予備品があるのかどうか分からないまま探し続け、対応方針を決められずに1時間以上調合液を廃棄し続けてしまうこともありました。
    現在は部品の在庫状況をすぐに確認できるため、修理を進めるのか、それとも廃液を止める運転へ切り替えるのかを迅速に判断できるようになりました。その結果、調合液の廃棄ロスを大幅に削減できています。

    2次元コードなら詳しくない人でも「これだ」と分かる

    — 現場では、新しい使い方も試されていると伺いました。

    加藤さん: トラブル発生時の復旧が遅れる要因として、予備品の保管場所が分からないことに加え、部品交換に関する知識や技術の差があると感じています。
    そこで現在、ボトルラインでは設備に2次元コードを貼り付け、そこからM2Xの設備台帳へアクセスできる運用を試しています。現場で2次元コードを読み取るだけで、設備情報や交換手順、過去のトラブル履歴を確認できます。
    特にモーターなどの部品は見た目が似ていても型式や仕様が異なる場合があります。以前は型式を確認するために設備を分解することもありましたが、現在は設備台帳で確認できるため、必要な情報をすぐに確認できるようになりました。

    また、予備品台帳には保管場所の写真も登録しており、部品に詳しくない人でも迷わず探し出せるよう工夫しています。
    さらに、交換作業の動画や手順書の登録も進めています。トラブル対応や部品交換のノウハウを蓄積していくことで、経験の少ないメンバーでも対応できる環境を整えていきたいと考えています。

    — M2XでのAIの活用については、いかがでしょうか。

    松渕さん: 分厚い取扱説明書から必要な情報を自分で探すことはトラブルが生じている時ほど大変な作業です。M2XのAI機能は、過去のトラブルだけでなく、取説・マニュアル類の情報も参照して答えてくれる点が有用だと感じています。現在は関連資料の登録を進めている段階ですが、今後さらに情報を蓄積することで、トラブル対応や設備保全業務の効率化につなげていきたいと考えています。

    — 最後に、同じようにDXに取り組まれている企業の保全担当者へ、メッセージをいただけますか。

    松渕さん: 設備保全のDXに踏み切れていない会社もあると思いますし、費用面でハードルを感じることもあると思います。
    ただ、一度自社の設備停止について詳しく見てみてほしいと思います。設備停止によって発生する人件費や生産ロス、廃棄損失などを積み上げてみると、想像以上のコストになっているケースもあります。
    その損失と導入コストを比較したうえで判断すれば、DXに取り組む価値が見えてくるのではないでしょうか。

    山科さん: これまで蓄積してきたデータやノウハウを会社の資産として残していくためには、DXは欠かせないと考えています。
    もちろん紙の記録も資産です。しかし、必要な情報を探すたびに時間がかかっていては、その都度、時間という別の資産を失うことになります。
    記録を活用できる資産として蓄積しながら、必要なときに誰でもすぐに利用できる状態にする。そのためには、デジタル化が重要だと思います。

    取材を終えて──M2Xより

    三和罐詰様の取材で最も印象に残ったのは、ロス率のお話でした。ラインが30分止まれば、流れている中身は捨てるしかありません。それなら、いったん循環運転に切り替えて、直してから再開したほうが捨てる量は少なくて済む。現場の方であれば分かっている判断のはずですが、予備品があるかどうかが分からないために、その切り替えを決められないまま1時間以上が過ぎていました。

    予備品の在庫を調べるのに「一番長いときで丸1日」。その時間が奪っていたのは、探していた時間そのものだけではありません。判断できないあいだに捨て続けた中身も、後ろ倒しになった作業も、すべてそこに含まれています。紙と表計算ソフトの中に記録は存在していても、必要なときに取り出せなければ、無いのと同じです。

    同時に、技術の伝承はまだこれからだと率直にお話しくださったことが、現在地の正確さを物語っています。三和罐詰様が「資産として残す」と表現された取り組みを、私たちも一緒に進めてまいります。

    (取材・文:M2X)


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