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食品工場の設備保全はどこから始めるべきか|点検を増やす前に自社設備の故障実態を明らかにする 

食品工場の設備保全はどこから始めるべきか|点検を増やす前に自社設備の故障実態を明らかにする 

公開日時:2026.9.2

更新日:2026.9.2

M2X編集部

この記事の執筆者

食品工場では、始業と終業の点検、日報、清掃記録と、日々多くの帳票に記入がなされています。それでも、同じ設備が同じように止まる。点検の項目を増やし、周期を短くしても、手間と部品交換のコストが増えるばかりで、トラブルが減った実感がない。そうした状態に心当たりのある方は少なくないはずです。

先に結論をお伝えすると、食品工場の設備保全で先に着手すべきなのは、点検の項目や頻度を増やすことではなく、自社の設備がどこで、どのような条件のときに壊れているのかを明らかにすることです。専任の保全担当者を工場に厚く置きにくい食品工場では、故障の兆候や原因、復旧の方法が対応した担当者の記憶にとどまり、点検項目や保全計画に反映されないまま、同じトラブルが繰り返されやすくなります。

本記事では、まず食品工場の設備保全が何を指すのかを整理し、点検しているのに同じトラブルが繰り返されやすい理由を、保全を担う人、記録の書き方、記録のつながりという順に明らかにします。そのうえで、自社の故障実態が見えるようになる記録の残し方と、そこから点検表を見直す進め方を、食品衛生法やISO 22000、公的な統計、食品・飲料5社の導入事例をもとに解説します。自社の現在地から次の一歩を描く材料としてお役立てください。

食品工場の設備保全とは何を指すのか

食品工場の設備保全とは、製造設備を止めない状態に保つための点検、修理、部品交換、記録の一連の活動を指します。一般的な設備保全と大きく違うのは、設備の点検と衛生管理が一体で運用されている場面が多いことです。何から手をつけるかを考える前に、この前提を押さえておく必要があります。

方式

内容

食品工場での位置づけ

事後保全

壊れてから直す

多くの工場に残る実態。ここで生まれる記録が、後の二つを設計する材料になる

予防保全

壊れる前に、決めた周期で点検し部品を交換する

取り組んでいる工場は多い。周期の根拠が自社設備の使用条件と合っているかが課題になりやすい

予兆保全

状態を監視して壊れる予兆を捉える

センサーなどの設備投資を伴う。土台となる記録が整っていない段階では効果が出にくい

設備保全は事後保全から予防保全、予兆保全へ段階が上がる

設備保全の方式は、事後保全、予防保全、予兆保全の三段階で整理できます。事後保全は壊れてから直す方式、予防保全は決めた周期で点検し部品を交換する方式、予兆保全は設備の状態を監視して壊れる兆しを捉える方式です。

段階が上がるほど停止は減りますが、必要な土台も重くなります。予防保全では点検周期と交換周期の根拠が必要になり、予兆保全ではセンサーによる状態監視の仕組みと、その値を判断できる基準が必要になります。

公益社団法人日本プラントメンテナンス協会の2024年度メンテナンス実態調査報告書によると、2024年度の保全費の構成比は予防保全費用が31.0%、予知保全費用が23.7%、事後保全費用が22.3%でした(製造業全体の数値)。予防保全に費用を割いている工場は少なくない、というのが現在地です。だからこそ、次に何をすべきかという問いは、方式を上げることではなく、いま行っている点検の根拠を確かめることに向かいます。

参考:

公益社団法人日本プラントメンテナンス協会『2024年度 メンテナンス実態調査報告書』図表-13(17ページ)

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止まったときの影響が大きい設備から押さえる

食品工場の設備保全では、どの設備を優先して見るかで打ち手が変わります。食品工場の設備は、止まったときに何が起きるかで性格が分かれます。

設備の例

止まったときに起きること

殺菌機、レトルト釜

製造が止まるだけでなく、殺菌が不十分な製品が出れば出荷の判断に影響する

冷凍機、冷蔵設備

庫内の製品や原料そのものが失われる。復旧の速さが損失額を左右する

金属検出機、X線検査機

検査の信頼性が揺らぎ、通過した製品の扱いを判断し直す必要が生じる

充填機、シール機、包装機

充填量やシール不良が品質のばらつきにつながり、手直しや廃棄が発生する

CIP洗浄装置、コンプレッサー、ボイラー

複数のラインが同時に止まる。用役設備のため影響範囲が広い

食品工場では、設備が止まることの影響が二重になりやすい構造があります。生産が止まって計画が崩れることに加えて、つくりかけの製品や在庫そのものを失う場面があるためです。冷凍設備の停止は在庫の損失に直結し、殺菌設備や検査機の不具合は、すでにラインを流れた製品の扱いを判断し直す必要を生みます。

どこから記録を整えるかを考えるなら、この影響の大きさが手がかりになります。すべての設備を同じ濃さで記録しようとすると現場の負担が増えるだけです。止まったときに製品や出荷判断まで影響が及ぶ設備から、故障実態が見える状態をつくっていくのが現実的です。

設備の点検記録は衛生管理の実施記録にもなる

食品工場では、設備の点検記録が衛生管理の実施記録としても使われる場面があります。飲食による健康被害を防ぐことを目的とした食品衛生法にもとづく衛生管理の基準が、特定の計器や装置の定期点検とその記録、そして故障や破損があったときの補修を求めているためです。

設備保全に直接関係するものとして、大きく次の二つがあります。

  1. 温度計や圧力計、流量計といった計器類と、滅菌、殺菌、除菌、浄水に用いる装置について、機能を定期的に点検し、その結果を記録すること

  2.  機械器具とその部品に故障や破損があるときは、速やかに補修し、適切に使用できるよう整備しておくこと

これらは、機械器具の洗浄・消毒や衛生的な保管などとともに、「設備等の衛生管理」として定められています。つまり食品工場において、設備を適切な状態に維持することは、生産効率だけの問題ではなく、衛生管理を構成する要素の一つとして位置づけられているということです。

なお、ここで挙げた設備の点検に関する基準は、HACCPに沿った衛生管理とは別に定められている一般的な衛生管理にあたります。HACCPは、事業者みずから計画をつくって重要な工程を管理する手法で、2021年6月から原則としてすべての食品等事業者に求められているものです。事業者は、この両方にもとづいて衛生管理計画をつくることになります。

参考:

厚生労働省「HACCP(ハサップ)の考え方を取り入れた衛生管理」

食品衛生法施行規則 別表第十七(e-Gov法令検索)

ISO 22000でも設備の保守は食品安全を支える土台になる

ISO 22000の認証を取得している工場でも、設備の保守は食品安全を支える土台のひとつとして扱われます。ISO 22000は、食品の安全を確保するための管理の仕組みを定めた国際規格で、国際標準化機構(ISO)が発行しています。現行版は2018年に改定されたもので、さきほど触れたHACCPの原則を取り込み、工場としての管理の仕組みに組み立てた内容になっています。

この規格では、HACCPの原則に加えて、食品安全を支えるための前提条件プログラム(PRP)を整備することが求められます。PRPとは、安全な食品をつくるために必要となる基本的な条件や活動のことです。清掃や洗浄、防虫・防鼠などと並んで、施設や設備を適切な状態に維持することも、このPRPに含まれます。

設備に不具合や劣化があれば、金属片などの異物混入や、十分な洗浄ができないといった食品安全上のリスクにつながる可能性があります。そのため、設備を適切に保守・点検することは、生産を止めないためだけではなく、衛生的な製造環境を維持するための土台のひとつといえます。

また、ISO 22000のようなマネジメントシステムの規格では、取り組みを実施するだけでなく、その実施状況を記録などの客観的な証拠で示せるようにしておくことも重要になります。定めた方法や頻度で保守・点検していること、その履歴が残っていること、異常が発生した際にどのような処置を行ったのか。こうした情報を蓄積しておけば、設備を適切に管理していることを示しやすくなるだけでなく、故障傾向の把握や、点検内容と保全計画の見直しにも活用できます。

参考:

ISO 22000(現行版は2018年改定)

コーデックス委員会『食品衛生の一般原則』CXC 1-1969

点検しているのに同じトラブルが繰り返されやすいのはなぜか

同じトラブルが繰り返されやすいのは、記録が足りないからではありません。食品工場では点検記録が日々作られており、量そのものは十分にあります。問題は、その記録が後から突き合わせられる形になっていないことです。担当者ごとに書き方が違い、どの設備のどの部位の話なのかもたどれない。この状態では、記録が何枚積み上がっても、同じ故障が繰り返される原因にはたどり着けません。ここでは、保全を担う人、記録の書き方、記録のつながりという順に整理します。

要素

起きていること

向かうべき方向

保全を担う人

専任の保全担当者を工場に厚く置きにくく、対応の判断が担当した個人の中に残る

個人の記憶にとどまっている内容を、記録として組織に残す

記録の書き方

記載内容や表現が担当者ごとにばらつき、集計も突き合わせもできない

症状と原因の分類をそろえ、選択式で表記を統一する

記録のつながり

記録が設備や部位、修理履歴と結びついておらず、必要なときに引き出せない

設備と部位を特定できる形で記録を紐づける

保全を専門に担う人を工場に厚く置きにくい

食品工場では、設備保全を専門に担う人を工場に厚く置きにくい状況が続いています。人を採って埋めるという解決策が、事実上とりにくいためです。

農林水産省が公表している『食品製造業をめぐる情勢』(令和8年4月)によると、食品製造業の有効求人倍率は2.89倍で、全産業平均の1.31倍に対して2倍以上の水準で推移しています。労働生産性は食料品製造業が710万円、全産業が968万円で、人手を要する工程が多い分だけ低い水準にとどまっています。同資料は経営規模についても、食品製造業は中小企業と零細企業が97.4%を占めると示しています。専任の設備課を置ける規模の企業は、業界全体で見れば限られるということです。

その結果として起きるのが、対応の判断が個人の中に残る状態です。健康食品やサプリメントを製造する株式会社ファインは、次世代設備保全クラウドM2Xを導入する前を振り返って「対応したこと自体は『記憶』に残っていても、『記録』として残す習慣がありませんでした」と述べています。麺類を製造するシマダヤ東北株式会社も、ベテラン社員それぞれが持つ設備保全の知見や技術の伝承が難しいという課題を挙げていました。

参考:

農林水産省『食品製造業をめぐる情勢』令和8年4月(7〜9ページ)

記録の書き方が担当者ごとにばらついている

記録が残っていても、書き方がそろっていなければ突き合わせる材料になりません。同じ現象を、ある担当者は異音と書き、別の担当者は異常音と書く。ある担当者は発生箇所まで書き、別の担当者は設備名だけで済ませる。こうした状態では、過去の記録を集めても傾向が見えてきません。

清涼飲料水の製造を手がけるNビバレッジ株式会社は、紙帳票にトラブル記録を残していたものの、書きぶりや記載内容が人によっても異なり、活用できる状態にはなっていなかったと振り返っています。各トラブルへの対応は属人的でブラックボックス化し、チームで適切な分担ができない状態にもつながっていました。

記録が設備や修理履歴とつながっていない

記録が設備や修理履歴とつながっていないと、必要なときに引き出せません。記録が増えるほど、探す手間も増えていきます。

エバラ食品工業株式会社栃木工場では、過去の日報やトラブル記録を見返す際に、紙帳票をとじた大量のファイルから該当の記録を見つける必要があり、かなりの手間がかかっていたといいます。どの設備のどの部位で起きたことなのかが記録の側から引けないため、探す作業そのものが負担になっていた状態です。

この課題は業界全体でも重みを増しています。日本プラントメンテナンス協会の2024年度メンテナンス実態調査報告書では、ここ数年で増加した保全上の課題として、人材育成・確保の方法が70.5%、高経年設備対応が62.0%、故障の再発・未然防止が46.5%、保全データの活用・分析が42.6%と並んでいます(製造業全体の数値)。記録を活用し分析することが、課題として認識されつつあるということです。

経済産業省の2026年版ものづくり白書でも、製造現場でデータを取得している事業者が約7割にのぼる一方で、そのデータを活用して効果が得られた事業者は約4割にとどまると報告されています。データを取ること自体より、取ったあとに活かせるかどうかが分かれ目になっています。

参考:

公益社団法人日本プラントメンテナンス協会『2024年度 メンテナンス実態調査報告書』図表-9(14ページ)

経済産業省『2026年版ものづくり白書』概要19ページ

点検の項目や頻度を増やしてもトラブルが減らない理由

同じトラブルが続くとき、まず検討されるのは点検の強化です。しかし項目を足し、周期を短くしても、それでトラブルが減るとは限りません。増えるのは点検の手間と部品交換のコストです。点検を軽視するという話ではなく、順序の話です。自社の設備がどこでどのような条件のときに壊れているのかが見えないまま点検を足しても、当たりをつけられないためです。

点検周期の根拠が自社の使用条件と合っているかを確かめる

点検周期と部品交換周期は、自社の使用条件と合っているかを確かめる価値があります。設備メーカーが示す標準的な摩耗期間や交換周期は、幅広い使用条件を想定した目安として設定されているためです。実際の摩耗は、運転条件や稼働時間、扱う原料、洗浄の頻度によって前後します。標準値が間違っているという話ではなく、標準値は出発点であり、自社の実績と照らして調整していくものだということです。

ここで手がかりになるのが、自社設備の故障実態です。どの設備のどの部位が、どのような運転条件のときに、どれくらいの周期で不具合を起こしているのか。この情報が揃っていれば、点検周期を延ばす判断も、短くする判断も、根拠を持って下せます。M2Xが導入支援を行ってきた現場では、自社に合った適切な点検や部品の交換頻度が分からないという声が繰り返し聞かれます。

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項目と頻度を足すと点検の手間と部品交換のコストが増える

点検の項目と頻度を足すと、確実に増えるものが二つあります。点検にかかる手間と、部品交換のコストです。標準の摩耗期間や点検頻度に従って作業を続けているのにトラブルが減らず、その一方で手間とコストは膨らんでいく。これは予防保全に取り組む工場が突き当たりやすい壁です。

人を増やせない前提では、この負荷は現場の他の業務を削る形で吸収されます。記録を書く時間、原因を調べる時間、改善を考える時間から削られていきます。点検を増やすことが、故障実態を明らかにする時間を奪ってしまうという逆転が起こりえます。

食品工場では点検に使える時間そのものが限られている

手間とコストの問題に加えて、そもそも点検に使える時間を確保しにくいという事情もあります。食品工場では、設備を止められる時間が細切れになりやすいためです。

設備を止められる時間が細切れになる理由は、いくつも重なっています。日々の洗浄のために設備を分解して組み立てる時間が、まず必要になります。多品種を扱う工場では、品種を切り替えるたびに段取り替えが入ります。賞味期限を起点に計画を組むため、先につくり置きして設備を止める時間をつくるという調整もしにくくなります。2交代や24時間で操業していれば、ラインが完全に止まる時間帯そのものが限られます。

限られた時間に点検を足していけば、その時間は点検で埋まります。だからこそ、どの設備のどの部位を重点的に見るかという優先順位が必要になり、その優先順位をつけるために自社の故障実態が必要になります。

点検の周期や判定基準に明らかな不備がある場合は先に直す

点検の内容に明らかな不備があるときは、記録の整備を待たずに先に直すべきです。順序の話は、危険を先送りする理由にはなりません。

たとえば、法令で求められている点検が実施できていない、見るべき部位が点検表から漏れている、正常と異常の判定基準が担当者の感覚に委ねられている、といった状態です。これらは故障実態が分かっていなくても不備だと判断できます。殺菌設備や安全装置のように、不具合が製品の安全や作業者の安全に直結する設備についても同様です。

本記事が扱うのは、点検を一通り実施しているのにトラブルが減らないという状況です。明らかな不備を直したうえで、それでも繰り返される故障に対して、記録から手をつけるという順序を提案しています。

自社の設備がどこでどのような条件のときに壊れたかを残す

故障実態を明らかにするために必要なのは、記録を増やすことではありません。いま書いている記録を、あとから必要なときにスムーズに引き出せる形に変えることです。決めるべきことは三つあります。

順序

決めること

目的

1

設備と部位を特定できるようにする

記録が確実に設備に紐づき、後から引き出せる

2

症状と原因の分類をそろえる

担当者ごとの表記のブレをなくし、集計と突き合わせを可能にする

3

何をどう残すかを決める

原因の特定に足りる情報を、現場の負担を増やさずに残す

設備と部位を特定できるようにする

最初に決めるのは、記録が確実に設備に紐づく仕組みです。設備名の表記が帳票ごとに違えば、後から同じ設備の履歴を集めることができません。設備台帳を整え、どの設備のどの部位かを一意に指せる状態をつくることが出発点になります。

現場の入力を軽くする方法もあります。設備に2次元コードを貼り、読み取るとその設備の報告記入ページに直接入れるようにしておけば、担当者は設備を選んだり名称を入力したりせずにトラブルを報告できます。設備の取り違えが起きず、記録は必ず正しい設備に紐づきます。

部位まで残すかどうかは、設備の構成に合わせて決めます。同じ設備で複数の部位が不具合を起こすなら、部位を分けておくと後から傾向が見えます。逆に部位が一つしかない設備で細かく分けると、選ぶ手間だけが増えます。

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症状と原因の分類をそろえる

次に決めるのは、症状と原因の分類です。自由記述に頼ると担当者ごとに表現が分かれ、集計も突き合わせもできなくなります。あらかじめ選択肢を用意し、選ぶだけで済む形にしておくと、表記のブレが起きません。

分類の粒度は、後から何を知りたいかで決まります。設備が止まった原因を運転条件と結びつけて見たいなら、症状と原因のほかに、そのときの製品や運転状況を残す欄が必要です。最初から完璧な分類を目指す必要はなく、運用しながら整えていけば十分です。

何をどう残すかを決める

三つ目は、何をどう残すかです。原因の特定に足りる情報を、現場の負担を増やさずに残せる形を先に決めておきます。

言葉にしにくい状態は、写真と動画で補うのが確実です。エバラ食品工業株式会社栃木工場は、トラブル発生時にスマートフォンのカメラで写真や動画を撮影して添付することで、文字のみの履歴よりも正確に状況を伝え、残すことができるとしています。シマダヤ東北株式会社でも、写真つきでトラブルを共有できるようになり、管理者がどこにいても即時に判断できる状態になりました。

写真は、書く負担を増やさずに情報量を増やせる手段でもあります。漏れの範囲、汚れ方、摩耗した部品の状態は、文章で正確に書くより一枚撮る方が速く、正確です。文字で書く欄は、選択肢で表せない補足に絞ると入力が軽くなります。

記録を続けられる状態にするために決めておくこと

記録の形を決めても、続かなければ故障実態は見えてきません。続かなくなる理由は主に二つです。入力が重いこと、そして書いても何も起きないことです。この二つを先に手当てしておく必要があります。

入力項目を増やすことが目的ではない

記録の質を上げることは、入力項目を増やすことではありません。異常が起きた直後、現場がまず動くのは、ラインを止めるかどうかの判断と、復旧の段取りです。その最中に長文を書かせる設計にすると、入力は後回しになり、記憶に頼った事後入力や、選択肢を適当に埋める行動を招きます。

M2Xが設備保全アプリの開発と導入支援で置いてきた前提は、忙しいなかでも簡単に入力できることです。現場担当者が迷わず、簡単かつ正確に入力できる形になっていなければ、記録は続きません。選択形式の項目と写真の添付は、記録の質を上げながら入力を軽くする組み合わせです。

項目を設計するときの目安は、後から使う予定のない欄を作らないことです。集計にも原因の特定にも使わない項目は、現場の入力時間を削るだけになります。

書いた記録に反応が返る状態をつくる

記録が続くかどうかは、書いたものに反応が返るかで決まります。詳しく書いても返答がない、応急処置で終わる、何度報告しても改善されないという状態が続けば、現場は次第に書かなくなります。

日興薬品工業株式会社は、紙とM2Xの二重運用を避けて一気に切り替えたうえで、週に一度のミーティングと全員参加の説明会を設け、評価制度にも組み込む形で運用を進めました。紙の全廃から約3か月で現場に定着しています。記録を書く側から見て、書いた内容が読まれ、扱われていると分かる状態をつくったことが背景にあります。

M2Xが導入支援を行ってきた現場でも、進め方を現場任せにして少数のリーダーだけが孤軍奮闘する、あるいは上位者が指示するだけで自分は動かない、という形はうまく進みにくい傾向があります。記録の様式を決めることと同じくらい、記録を受け取って返す側の動きを決めておくことが重要です。

故障実態が見えると点検表と部品交換周期が変わる

記録が引き出せるようになると、点検表を自社の設備に合わせて見直せるようになります。標準値を出発点にしたまま据え置くのではなく、自社の実績で調整していく状態です。

トラブル履歴を材料に点検項目を見直す

溜まったトラブル履歴は、点検項目を見直す材料になります。どの部位がどれくらいの頻度で不具合を起こしているかが分かれば、点検表に足すべき項目と、外してよい項目が判断できます。

Nビバレッジ株式会社は、トラブル履歴を材料に定期点検の項目を変更し、予防保全の進化につなげています。あわせて年間の定期点検計画をM2X上で作成し、定期点検の抜け漏れをなくしました。突発的なトラブルが起きると予定していた点検が漏れる、という以前の状態から変わっています。

記録が使えるようになると、部品の管理の仕方も変えられます。日興薬品工業株式会社では、いざ交換しようとしたら部品がないという状況が月に1〜2回起きていましたが、各部品に発注点を決めて登録したことで、発注漏れも過剰在庫もなくなりました。

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他のラインの故障を自ラインの予防に使う

多品種で複数のラインを持つ食品工場では、他のラインの故障実態が自ラインの予防に使えます。同じ設備が別のラインにも入っていれば、そこで起きた不具合は自ラインでも起こりうるためです。

エバラ食品工業株式会社栃木工場では、他のラインで発生したトラブルも含めて検索し閲覧して、担当ラインの保全活動の改善に活かす取り組みにつながっています。記録が設備に紐づき、検索できる状態になっていることが前提です。

この使い方は、工場をまたいでも成立します。同じ機種を複数拠点で使っているなら、拠点間で故障実態を持ち寄ることで、一拠点だけでは見えない傾向が見えてきます。

記録の使い方を変えた食品と飲料メーカーの事例

ここまで紹介してきた進め方に取り組んだ企業を、一覧で整理します。5社に共通しているのは、いきなり全体を変えず、日常的に行っている記録から着手している点です。

業種

企業名

課題

導入後の変化

調味料

エバラ食品工業

・帳票が年々増え、過去の関連帳票がすぐに見つからない。
・日報の承認に2〜3日かかる

・日報承認が即日〜1営業日に短縮。
・年間6,000枚以上のペーパーレス。
・残業の抑制。
・他ラインのトラブルも検索して自ラインの改善に活用

清涼飲料

Nビバレッジ

・トラブル記録の書きぶりや記載内容が人により異なり、活用できる状態になっていなかった

・記録のフォーマットを統一。

・定期点検の抜け漏れを解消。

・トラブル履歴を材料に点検項目を変更

健康飲料・清涼飲料

日興薬品工業

・点検表は紙で多い月は50枚。
・記入が後回しになり実施の有無が見えない。
・交換しようとしたら部品がない状況が月1〜2回

・記録を探す時間が30分から2〜3分に短縮。
・予備品の発注漏れがゼロに。
・3時間規模の停止が約20分に収まった例も。
・紙の全廃から約3か月で定着

健康食品・サプリメント

ファイン

・対応したことは記憶に残っても、記録として残す習慣がなかった。
・部品の在庫が見えず、足りないことも多すぎることも起きていた

・予備品の見積もりのやり取りが、1件20分から5分もかからない状態へ
・重複発注がなくなり、在庫切れもほとんど発生しない状態へ

麺類

シマダヤ東北

・ベテランが持つ設備保全の知見の伝承が難しく、紙とエクセルのため共有が遅い

・課を超えた情報共有が活発化。
・保全活動のやり漏れリスクが減少。
・部品発注の遅れによるロスを軽減

各社の具体的な進め方については、以下の導入事例もあわせてご覧ください。

故障実態が見える記録の基盤をつくるという選択肢

設備ごとに記録を紐づけ、担当者ごとの表記をそろえた状態を、紙とエクセルで維持し続けるのは負担が大きい局面もあります。設備保全に特化したクラウドサービスは、現場の入力負担を抑えながら、自社の故障実態が見える記録の基盤を整える現実的な一手です。気になった方は是非お問い合わせください。

食品工場の設備保全は自社の故障実態を知ることから始まる

専任の保全担当者を工場に厚く置きにくい環境では、故障の兆候や原因、復旧の方法が対応した担当者の記憶にとどまりがちです。同じトラブルの繰り返しを防ぐには、自社の設備がどこで、どのような条件のときに壊れているのかを明らかにすることが出発点になります。

まずは、直近で繰り返している一つの故障について、どの設備のどの部位で、どのような条件のときに起きたかを残すところから始めてみてください。数件でも溜まれば、点検表を見直す材料になります。

執筆者

M2X編集部

M2X編集部です。設備保全や現場のDXに役立つ情報を、わかりやすくお届けします。製造業の"今"に寄り添い、明日から使えるヒントを発信していきます。

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